デザインの定義
では本題ですが、d.schoolっていうと、デザインについての認識の整理が大切です。「デザインって何や?」ということをお分かりになりますか?。基本的に、大学の先生でも、デザイナーでも、わかっていないという節があります。自分の分野だけのデザインしかわわかっていないと言ったほうがいいかもしれません。なんでそんなこと言えるかっていうと、シャープで総合デザインセンター長をやらせていただいた時に、経営者と直接話して、このデザインがどれだけ利益にとか、事業に役立つかっていうのをきっちり説明しないといけない。それから、部下は商品デザインはもちろん、店舗設計もいますし、グラフィックデザインの人もいますし、私が作った、UXデザイナーもいます。それらを全部総合してみて、デザインとはなんやっていうのを考えないと、それぞれのポジションからいうと、自分のジャンルからしか分からない。丁度私は2010年に退職しているんですけれども、そのちょっと前、2008年ぐらいからスタンフォード大学がd.schoolっていうのを始めたんです。このスタンフォード大学のd.schoolっていうのも、かなり設計寄りの概念で、私は不十分やと思っています。そんな中、公益財団法人京都高度技術研究所(ASTEM)の更田さんと出会いまして、じゃあこの奥田の考えているデザインっていうのをきっちり説明してよっていうのがこのKBDSの始まりなんですね。
Designの日本語表記
ではDesignとはなんでしょう。Designって日本ではこれだけの表記をするんですね。カタカナでデザイン、英語のDesign、翻訳するとそれから意匠とか設計。翻訳されたらこんだけの用語を使っているんです。全部間違っていないんです。全部当たっているんです。なぜかデザインシンキングが今注目されているけれど、デザインの意味が理解できないとわかりません。またデザインの枠組みがすごい勢いで拡大しています。そのことについてお話していきたいと思います。
色々な大学や専門学校でデザインを教えています。ただ、これはスタンフォードのいうてるデザインとは大分違います。スタンフォードのいうてるデザインというのはプロダクトデザインコンサル会社のIDEOの考え方で設計に近い概念でしょう。でも一般的にデザインという概念はあまた解釈があり、大学でも工学系もありますし、芸術系の大学もあります。しかし、デザイン現場では、工学系だから表現はわからない、美大系やから設計や技術は分からないというのはありえないですね。この両方がちゃんと分かっていないといけなと商品やサービスは創れない。
プロダクトデザインは私のドメインとなる仕事でしたが、家電製品や通信機器などの商品デザインをするだけでなく、商品企画からデザインまでします。
プロダクトデザイン、カーデザイン、それからUI、UXデザイン、インテリア・家具デザイン、建築・空間デザイン、ジュエリーデザイン、ファションデザイン、WEBデザイン、CGデザイン、キャラクターデザイン、まだまだあります。これだけたくさんの種類がデザインって世の中言われている。でこれの共通項というのをしっかり見つめ直さないといけません。実はこれらのデザインと言われている営みに共通する考え方がビジネスやイノベイティブな開発にものすごい有益なんです。そういう意味ではd.shcoolっていうのはすごい大事と思います。
私が始めたソフトウェアのデザイン、インターフェイスデザイン、最近はUXデザインって言っていますが。海外で若いデザイナー集めてUXデザインのワークショップやりますと、プログラム出来る人沢山います。日本のデザイン教育ではプログラム教育は出来ていないのです。
日本ではプログラムは出来るエンジニアはいるけどデザインができない。この様な状態では商品のバリューがおかしくなりますよね。商品バリューっていうのはハードソフトも含めて全部ですよね。
学生の作品(川村哲嗣さんの作品)
これは、私が指導した学生の作品です。このデザインっていうのは一番最初、この外側のデザインだけして、先生これ卒業制作にしたい。そんなん商品ではない。外型だけ、中身どんなことなってんねん?インターフェイスどうなってんねん?ネットワークの環境はどうなってんねん?ネットワークとその仕組みはどうなってんねん?ということを言い出すと、もうビジネスモデルをかかないといけなくなる。そこで、どんなアプリケーションがどんな風に動いて、それがどういう風になっているか?全部デザインしろと!と指導しました。
ハードのデザインモデルを持ってきたのですけど、ユーザーが見てもどの様に使うか分からん。ユーザーはユーザーインターフェイスの動作を見ないとハードモデルだけではデザインの価値はわからない。だからユーザーインターフェイスの動作するモデルを作らないとダメだと言いました。卒業制作審査まで時間があったので、夏ぐらいから簡単なプログラムを勉強して、それのユーザーインターフェイスのデザインの設計をさせました。その時は、エレガントなもんじゃなくって、まだ時計のようなものでした。「時計の様なデザインだったらアップルとかサムスンもうやってるやん。その次のデザインをやりなさい。」ということでまた潰されます。こういうアプリケーションを持ったウェアラブルコンピューターも時計が進化したのと同じ様に、ウェアラブルコンピューターがもっとファションギアとしてさらに進化するであろうと仮設をたて、今度はファッションアイテムなどアピアランスデザインの造形の研究を始めました。そしてこの様なデザインにリデザインしました。彼はこのデザインをソリッドワークしてCAD設計し、全部チタンでハードモデルを作りました。一方、ユーザーインターフェイスデザインは、動作モデルをCGでデザインしました。そして、この様にハードとソフトを全部含めてデザインとサービスの提案まで細作しました。私はこれで初めて商品デザインの提案になるのだ!と指導したのを思い出します。
では、これはプロダクトデザインなんですか?ファッションデザインなんですか?インフォメーションデザイン・・・インフォメーションデザインの中にユーザーインターフェイスのデザインも含まれます・・・なんですか?と言われたら、どれも当てはまります。すなわち一人のデザイナーがやるべきデザインの枠組みっていうのは、どんどん広がっています。日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)っていうのがあるのですけど、そこの枠組みの中に、じゃあシューズのデザインは?シューズのデザイナーが、JIDAに入りたいというと、いやこれ今までの枠組みじゃないよね。で、Gマーク、皆さんいままであまりご存知ないと思うのですけど、このあいだ、AKBが、Gマークもらいました。すなわち、デザインという概念がものすごい広がっていってるんですね。今までのデザインの枠組みでは語れない。みなさんはデザインというのを知るためには一度整理しないといけないのです。
ではデザインとはなんだろと考えてみましょう。意外と難しいんです。これ、100人デザイナーおったら100人答えが違います。Wikipediaでまた調べてみてください。今ちょうど
Wikipediaにかかれてるのは設計寄りのデザインの説明になります。意匠寄りのことは全然かかれていません。それほど、プロのデザイナーにとってもデザインって何かわからなくなっています。
図(デザイン分野の重なり)
各デザイン分野を重ねてみたら、この図の真ん中あたりで何か言えればいいのです。今は人の体験、体験っていうのは人の心で何かを感じたこと。その体験すなわち感じ方をデザインすることが重要になります。英語でいうとUser Experience Design、UXデザインていわれています。これもまたややこしいんですね。UXデザインっていうのは、私がソフトデザインセンター作った時、これインターフェイスデザインセンターと、ソフトデザインセンターと、どうしょーいうて悩んでたいたぐらい、まだ概念が定着していないころの話なんですけれども、ソフトデザインセンターの基本方針は人の体験をデザイすると言っていました。その頃から、ソフトウェアやキャラクターデザインやインターフェイスデザインをやっている人は、UXデザインはインターフェイスデザインのことだと言います。ところが体験をデザインするエクスペリエンスデザインが一人歩きし、例えば、映画のダイレクターは、UXデザインじゃないのか?とか。それからディズニーランドをデザインするっていうのは体験をデザインしている。それからUSJもそうですね。アミューズメントパークっていうのはまさにそれが目的です。そういう風に言ってしまうと、ショップもレストランも、ほぼ人の営み全部を包含してUXデザインと言えます。だからあの、私のドメインはプロダクトデザイナーとUIデザイナーですけれども、今はUXデザイナーって言ったりしたりしています。
私の体験、シャープ入る前にデザインコンサルやっていた時に面白い話がありましてた。最初はメニューとファザードとインテリアのデザインをしてくださいというクライアントの依頼で、あるレストランのデザインを承りました。コンサル入って色々やっているうちに「あなたのコンセプトとこのメニューあってない。」相手はプロのシェフ「でもあなたの考えていることと、今お客様に出そうとしているこのメニューはあっていない。」となってくるんです。メニューは今風に言うとコンテンツです。要はそのレストランで提供するコンテンツとコンセプトが合っていない。特にメイン。食事っていうのは、コンテンツ(提供するメニュー)から空間まで全部を総合的に演出しないといけない。例えばお客様がエントランスから入ってこられて、ウェイティングバーからテーブルまで案内してもらって、テーブルに案内してもらったらワインを選んで、コースを選んで、スタートして最後のデザート、コーヒーが出て、最終的にキャッシャーもしくはその場でお金を払う。この中で一つでもアウトがあったらそのレストランにはもうリピーターは来ない。いうならば映画の一つのストーリーの中でどれもアウトにできない。そうするとそれを全部デザインするという作業が起こるんですね。コンサルっていうスタンスでいうとビジネスそのものまでコンサルしていることになってしまいます。なぜデザイナーがそんな偉そうなことを言えるのかって言うと、この午後の話になりますけれども、人の心はどういう風にして動いていくんやっていう、毎日考えていくのがデザイナーなんです。そういう意味で体験デザインっていう捉え方はほぼ当たっている。
これまでの話を整理しますと、今、デザインの枠組みはグラフィックとかプロダクトとかは表現するメディアの名前です。今は人の心をデザインするっていうことを確認しました。UXデザインの様にデザインの名前が変わりつつあります。もともと商品・サービスのデザイン。ブランドデザイン。それからビジネスそのものをデザイン。それから未来のデザインする。この間実はここで、文明倶楽部っていう、面白い会があるのですけれども。フューチャーデザインについて高知大学の先生に話してもいました。またソシアルデザイン、社会のデザインとかそれからコーポレートデザインとか。
この講座では商品やサービスをどの様に創っていくかまたそれらをビジネスモデルとしてどの様に構築するかということについてお話しします。すなわちビジネスモデルをデザインし、そしてどの様にブランドを構築していくのかについて触れていきたいと思います。それから、デザインの概念は、ファッションや、プロダクト、それからキャラクターといったデザイン対象主題としたデザインではなく、もっと広い概念で捉えます。
そもそものデザインという考え方も時代とともに変わってきています。それだから、俗に言うデザインシンキングや、d.schoolは基本的に少し古いデザインの概念を元にしている様に思われます。 ビル・モグリッジが提唱したスタンフォードのデザインのやり方は、どちらかというと設計という概念に重きをおいたデザインプロセスをメソッド化し、ビジネスに応用しようという考え方に私には見えます。私たちもデザインの方法をメソッド化していこうという努力をしておりますけども、もうちょっと広い意味でデザインを捉えております。我々のこの講座全部通して、一貫しているのは人の心の動きをどうデザインするかということにつきます。
ではもう一度デザインていうの概念見直してみましょう。別の角度から。
Designを日本語で表記してくださいと言われたら、皆様はどの様に書きますか?
参加者の皆さんの多くは「設計」という答えですね
実は中国も台湾も設計と書きます。日本はデザインという概念が入ってきたのが非常に早くって、明治の中ごろだったと思います。その時の翻訳は意匠です。日本人で設計と言われるとエンジニアリング寄りの概念で、左脳思考で、問題の解決を計画的に構築することというニュアンスが強くなります。でも、ファッションデザインというと、実は左脳で問題の解決を計画的に構築し、ものすごい考えられているんですけれども・・・なんとなく違うような気がしますね。
ファッションデザインを設計かって言われたら。なんか違うよねって。もっと感性的な課題だよねという議論が起こります。Designを意匠か設計かっていうのも常に議論が起こります。この様に意匠か設計かという議論を進めていくとだんだん分からなくなってくるでしょ。だから日本では便利な表記があってカタカナの「デザイン」と表記するのです。
意匠とは、意匠法の中ではこう言う風にいわれています。「物品の形状、模様もしくは色又これらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法第2条)を保護の対象とします。物品の外観に現れないような構造的機能は保護の対象となりません。発明・考案が自然法則を利用した技術的思考の創作であって、特許法・実用新案法はその側面からの保護をしているのに対し、特許法で保護しているのです。意匠法は美観の面から創作を保護しており、特許法とは別問題です。
本来のデザインを本質的に保護するには、特許法でも意匠法でも不十分で、現場では保護しきれていません。
特に意匠法では日本のデザインは保護しきれないというのが大きなテーマです。技術的な問題解決の成果は特許法で保護されています。意匠権は実質的にはあまり役には立たない。デザインの本質がわからない法律家が判断しますから。そんなにゆるいものです。オリジナリティ性や考え方の違いではなく、他と違う様に見せればなんでも意匠登録できます。これでは戦えません。企業活動では意匠法はちゃんと踏んだ上で取らないといけないのですけれども、どっちかと言うと著作権法の方が注意がいる。著作権法で抑えたほうが強力かもしれないと言われています。
だから、海外では意匠法よりも著作権法で争いになるこが多いのです。まあこういう風に法律の面もまだ明確になっていないんですね。
中国や台湾では設計と書きます。それはどういうことかっていうと「必要とする機能を具現化し検討した結果、建物や工業製品、情報システム等をつくるためな仕様書や設計図・設計書等を作る作業である。」いう風な定義です。ここに一切感性寄りの話、美しいとか美しくないとかが入ってこない。
中国や台湾では日本でいう「デザインセンター」は「設計中心」と書きます。でもスタイリングや感性の話はしてますし日本のデザインと同じ意味です。
日本語では「意匠」って言ったり「設計」て言ったり。かつては意匠の意味の方が強かったりしますが、最近では設計の方が強くなってきているんです。日本の学者や建築家などは全く感性や意匠の話なしでデザインと言ったりします。私がデザイン始めた頃の1970年代、80年代は、一般のユーザーは「デザイン」はみんな意匠やと思っていたから、いやいや設計の方が大事なんやとそっちを強調していました。ところが今ものすごいデザインという言葉がエンジニアや学者の世界でも使われるようになって、設計という言葉の方が強くなってきました。時には意匠や感性は関係ないと思っている人もいるくらいです。それが現状です。だから今日本ではデザインというのはカタカナで書きます。日本語の正しい表記はカタカナのデザインです。
デザインの定義
ではこの講座におけるデザインという言葉を再定義しておきましょう。
デザインの語源っていうのはラテン語のdesignareっていう。これは計画を記号に表すっていう意味のラテン語です。でフランス語でいうとdessin(デッサン)です。なおかつこのdesignareっていうのはイタリア語にまだのこっていまして、これは指名するとか名前を与えるとか命令するという意味です。実はdesignareっていう概念がデザイン(カタカナ表記)の概念に近いかもしれません。
デザインとはある問題を解決することを目的とします。何か解決すべき課題があるわけですね。それを解決することを具体的に設計すること(設計)。そして設計された事物を思考によって捉え(概念化)その内容の表象(人が理解できる表現)として様々な媒体に応じて表現すること。
例えば、ここにスマートフォンがあります。これみなさんスマートフォンという概念は通じますよね。ここにコンピューター置いてます。コンピューターっていう概念も通じます。でもここにいらっしゃる方はエンジニアの方が多いと思いまが、これ部品に分解してください。ソフトウェアに分解してください。スマートホンとコンピューターは何にも変わらないんですね。ディスプレイがあって、入力装置があってセンサーがあって、CPUがあって記憶装置があって、それからネットワークに繋がる。何にも変わらない。すなはち、これをスマートフォンとして世に出すのか、コンピューターとして世に出すのか、これだって、概念を創り、概念化された内容を形態として可視化しないとデザインとは言わない。ただ外観のデザインだけでは意味がない。本来、設計と表象、この二つの意味がしっかりできていないと、これはいいデザインとは言わない。
大学生は、ものすごく苦労します。設計は良くできていても、表象もちゃんと表現され新しい概念が提案されていても、それらのデバイスやソフトウエアーを運用するシステムの提案も必要で、それらを含めたデザインをしなければならないのです。そしてデザインが人にとって新しい概念として捉えられる様にしなければデザインと言えないのです。この様に捉えると、これまでの大学て教えているデザイン学科ではカバーできなくなってきています。
すなわち新しいシステムをデザインするということは、プラットフォームやそこで生まれる生活文化までを対象としなければならないということです。
問題を解決すること、ある問題を解決する為目標を設定しその問題を解決するための設計すること、この行為はエンジニアリングだけでなくプロセス設計もあれば、プロジェクト設計もああり、会社の設計も、社会がどうあるべきかも含めて設計する。そして、ただ設計してもそれが結果として文化として定着しなきゃ市場は創れない。市場が作れるっていうことは文化として社会に定着することですね。だから、その為には今あなたが提案していることはどの様な概念で、それはユーザーから見たらどの様に見えるかが重要で、その時どの様な媒体を使ってその概念や考えを伝えるかということも、ちゃんと考えないといけません。そこまで考えないといいデザインとは言えません。また市場を変える様なデザインはできません。
今朝、ASTEMの控え室でお話ししていたんですが、デザインってどんな勉強するんですか、いや、めっちゃめちゃ色々あるんですよという話をしていました。これ解決するには相当な努力が必要で、大学の四年間では足りない。最低6年、10年ぐらいかかると思います。だから、デザイナーが一人前になるには大学出てから五年ぐらいたたないと使えない。私の場合、最初の就職先がモノづくりの本質を教えてくれました。プロジェクトを作ったり商品を作ったり事業を企画したりするとこまでするとなれば、また違う勉強をしていかないといけない。でも根本的にはデザインの概念はそういうとこから再認識していかないといけないと思います。
今なぜデザインシンキングなのかっていう理由。これは表現メディアの革新がものすごく幾何級数的に起こっています。今のデジタル社会がモノごとの考え方を革命的に変えています。 体験をデザインするーUXデザイン(User Experience Design)という概念がでてきたのも、デジタル社会が始まってからです。ソフトウェアデザインをやっていた頃に、ソフトウエアーのデザインなんて営業さんはまったく興味を示さない。会社の多くの方も同じです。「ユーザーインターフェイスデザインなんて、そんなん店頭で見ても何が良いかわからへん、この商品のユーザー・インターフェイスがよかっても店頭では売れる力にならへん。」とよく言われました。
商品を買ってもらったお客様とのコミュニケーションとか関係性、それから絆を築いて行こうと思ったら、ユーザーインターフェイスに失敗すると大変なことになります。
私がちょうどソフトデザインセンター始めた時に面白い事例があって。みなさんシャープの書院というワープロ、覚えてはります?何人かの人使っていただいてると思うんですけれども。これ、ばか売れしました。今やからいうけど濡れ手に粟です。今からいうたらコンピューターの一部をピッて切り出しただけの話なんですけど。なぜ売れたかとういうと、実は優秀なインターフェイスっていうのはいっぱいあったんです。富士通、NEC、東芝、みんなワープロ出してたんです。ところがシャープのシェアは当時30パーセントか40パーセント取っている。 インターフェイスもよかったのですが、最初ワープロを発売する時にシャープの書院はワンマーク安かったんですね。だからたくさんのユーザーに使っていただきました。そうすると何が起こるかっていうと、書院のインターフェイスが自分にとって慣れ親しんだインターフェイスになってしまったんです。開発者からみると富士通が一番良かったと思うんですけれども、お客さんにとったら自分が慣れてしまったインターフェイスっていうのが一番使いやすいんです。だから次に買う時もシャープ。その時は安くしなくっても、使いやすいと感じるのはっシャープの書院ですから。一度ユーザーインターフェイスに慣れて自分のものにしてしまうと、これ麻薬みたいなもんです。こういう言い方すると実はすごい語弊があるのですけれども、それぐらい絆をつくるには重要な要素なんですね。インターフェイスのデザインというのはみんなナメてかかっていて、使いやすかったらいいという話じゃなくて、ビジネス戦略にもものすごい重要な要素なんです。
例えば、お店で考えるとわかりやすい。初めてのお店に行った時、店主が不親切で、客が望まない商品を押し付けてくると、値段は適切なんですけどそんなお店は行きませんよね。いい商品を売ってるんですけど、店主が不親切だったらそんな店には行かないですよね。それと同じで、ユーザーインターフェイスのデザインは、お店と同じ様に人と企業の接点なんです。お店でお客の要望を聞き商品を売るのと同じぐらい重要なんです。