オープニングセッションの動画公開!「対談 デザインと日本文化」

2015年6月20日に2015年度の京都D-Schoolが開講いたしました。

本年度は「デザインと日本文化」という視点で、
開講前から多くの方からご注目いただき、
初日のオープニングセッションは、
定員50名を超える参加者とともに開催されました。

参加者は、起業家、技術エンジニア、アート関係者、茶道関係者など
幅広いバックグラウンドの方々にお集まりいただきました。

オープニングセッションは、3部構成です。
本記事では、それぞれの概要を報告いたします。

(1) 対談:デザインと日本文化(奥田充一 × 太田宗達)
(2) 仮説のマネジメント(大江建)
(3) パネルディカッション(大江建 × 奥田充一 × 砂金信一郎 × 中村昌平 ほか)
(敬称略)

(1) 対談:デザインと日本文化(奥田充一 × 太田宗達)

第一部の対談では、本年の講座を総合プロデュースされている
講師の奥田充一氏からご挨拶をいただき、
「なぜ、2015年度の京都D-Schoolは、デザインと日本文化なのか?」を
多彩な経歴をお持ちの茶人 奥田宗達氏とともに対談を通して
参加者・受講者に示唆を投げかけました。

対談の様子は、動画で公開しております。

*現在、動画は非公開となっております。

動画の公開期限は、本講座がスタートする7/11(土)までとなります。

対談でキーワードとなった専門的な用語や固有名詞をいくつか挙げてみます。

UXデザイン、ブリコラージュ、数寄(すき)
小堀遠州(こぼりえんしゅう)、曲直瀬道三(まなせどうさん)

これらの用語を少し調べていただけると、
対談内容をより深く理解いただくことができるかと思います。

(2) 仮説のマネジメント(大江建)

第2部では、大江氏から実験経営学について講義いただきました。

実験経営学とは、今日のビジネスモデルキャンバスなどの潮流に先んじて
大江氏が30年以上に渡って提唱している経営や新規事業創出の方法で、
仮説と検証を素早く小さく繰り返し、マネジメントを行う方法です。

講義前半では、
・現在の経営学のトレンド
・新規事業の定義
・競争優位性の短期化
といった現状分析を共有いただきました。

後半には、研究開発成果をビジネスアイデアにする方法などにも触れ、
「カエルの子はカエル、トンビは鷹を産まない」
「研究開発テーマの特徴をよくみて、ビジネスアイデアを予測する」
といった本質を語っていただきました。

また、仮説検証と実践の例としてご自身の経験をもとに、
「これら(事例)は、メソッドから出てきたものではなく、体験から出てきたもの。」
「だから体験しないといけないと思う。」と語られ、
参加者に、自ら体験することの重要性を強調されていました。

(3) パネルディカッション(大江建 × 奥田充一 × 砂金信一郎 × 中村昌平 ほか)

第3部は、第1部・第2部の内容を受けて和やかに開始されました。

まず初めに、茶人は、
・客人をもてなすために幅広く膨大な知識・経験を積み、
・茶事の席では、その場の空気を読み、
・客人に合わせて振る舞いを変える
といったことに触れ、
「茶事は、その場の空気を読み柔軟に対応することで価値創造を行う」という
トピックからスタートしました。

砂金氏(マイクロソフトで技術、ビジネスから啓蒙活動を行うエバンジェリスト)からは、
次期 Windows OSに搭載されるAIの機能や特徴を解説いただき、
その技術が目指すものは、茶人のおもてなしに近いものがあるとし、
考察をいただきました。

他、登壇者からも、
茶人の膨大な知識経験は、ビッグデータと置き換えて、
鋭い洞察を行い柔軟に対応する振る舞いは、AIによる自然言語の理解と
AIがユーザーに提案を行うといった行為に置き換えることができるとした時に、
日本的な細やかな対応方法を実現することが
大きなアドバンテージになると示唆がありました。

究極的なおもてなしである茶事の本質理解が、
次代の技術開発や商品イノベーション、体験イノベーションの実現に
大きな力となることを共有しました。

また結びに、奥田氏より、
「実際にどう理解し、どのようにイノベーションにつなげるのか、
その手法の確立を「京都D-School 2015」を通して、
参加者と共に(主客一体となって)創り上げていきたい」と言及されました。

以上、講座のレポートでした。

(最終更新 2015/6/29)


筆者所感

本日の講座を受けて「教育・学習」について妄想しました。

パネルディスカッション後は、ワールドカフェ形式で、
登壇いただいた講師陣と、参加者が6〜8名1組のテーブルを囲み、
デザインについて、今日的なイノベーションについて、日本文化について、など
それぞれの関心事や考察を、熱く交わしていました。

この様子を拝見しながら、現在、教育分野に起こっている変化について
筆者のつたない現状理解と、今後の教育とは?について妄想です。

(1) 一部の教育改革の潮流には、講師(教授する側)と参加者(教授を受ける側)に
明確に線引きされている状態は、学習者にとって最適な環境とは言えないとされている。
(2) 学習効率を高めるといった観点から、講師と生徒の二者間に引かれてる境界線を取り払い、
講師がファシリテーターとなって、参加型のワークショップ形式やワールドカフェ形式で
学習を行う方法が注目され、徐々に採用されている。

この傾向は、詰め込み教育最後の80年代生まれの筆者は、
半信半疑ながらも、なんとなく良い傾向だと感じていましたが、
本日の対談を拝聴することで、上述(1)(2)は、
「境界線があり・なし」に基づく「二元論」だと感じるようになりつつあります。

二元論、つまり同一階層では問題の根本解決はできないということなら、
次の時代に、どのような教育や学習環境が創出されるのかを考察してみました。

それは、「二者が、それぞれにとって心地よい境界線を、共に創る」
といった教授法なのでは、と。

その教授法がどういった形なのかは、まだわかりません。
どう講座をデザインするのかも不明なので、
素人が考えた『曖昧で貧弱なコンセプト(仮説)』です。

しかしながら、個人的に希望があるかもと思うこと。
それは、デザインと日本文化という視点を持つことは、
考察を深めるとっかかりや、新しい発想をするトリガーとなると感じています。

京都D-Schoolで得られた知識・経験を持って、
世の中の様々な事象や変化、変化の予兆を眺め回すことで
イノベーションの萌芽を見つけ出すことができればと思うに至っております。